補聴器とは

基本的には音を大きくするだけの増幅器です。言葉の聞き取りそのものを改善するものではなく、そのため装用による言葉の聞き取りに個人差があります。

日本の補聴器事情

・日本における難聴者の数は約1,430万人
・日本における補聴器装用者の数は約200万人
・日本では難聴者の数に対して補聴器を装用している人の数が少ない。先進国の中で低く、日本では補聴器をすることに抵抗がある人が多いのが現状
・一般的な補聴器のイメージは、大きくて目立つ、恰好悪い、年寄り臭い 、雑音がうるさい、ピーピー鳴るなど悪いイメージが強い

進化する補聴器

最近の補聴器は、入ってきた音を大きくするだけでなく、入ってきた音を細かく分析し、加工して聴きやすくする機能を持っています。音を加工することでうるさいと感じる音を抑えたり、不快に感じる音を出来るだけ抑えたりすることが可能で、不快感も少なく相手の言葉を聞き取れます。また、スマホで操作できる補聴器も増えています。外観も小さくて目立ちにくくカラーバリエーションも豊富でデザイン性も向上しています。きこえにくさを感じられている方は一度試聴されてみてはいかがでしょうか。

補聴器購入前に自身の耳の状態を知っておく

1.耳鼻科で耳の状態を診断してもらう。治療により改善可能かどうか。重大な疾患がないか。

2.純音聴力検査(音の聞き取り検査)で難聴の種類や程度を知る。語音弁別検査(言葉の聞き取り検査)で言葉の聞き取り能力を知る。

3.自身の生活環境を把握する(何人暮らし、外出の頻度、仕事、趣味など) → 補聴器のランクを選ぶ基準になる

補聴器の種類

1.耳掛け型

メリット

・機能性と操作性の観点から現時点で最も優れている。(1番売れている)

デメリット

・汗で濡れやすいため故障の原因になる
・髪の短い男性では目立つ
・眼鏡、マスクをしていると付けにくい

1-2.RIC型

メリット

・耳の後ろに隠れて目立ちにくい
・耳掛け型と同じで機能性と操作性の観点から現時点で最も優れている

デメリット

・汗で濡れやすいため故障の原因になる
・眼鏡、マスクをしていると付けにくい

2.耳穴型

メリット

・目立たない
・装用時前方側方の音をよくひろう、実耳に近い聞こえ方
・運動に適している、汗に晒されにくい
・眼鏡の邪魔にならない

デメリット

・ハウリングが起きやすい
・重度難聴には対応していない
・オーダーメイドの為に耳掛け型に比べ割高
・小さくて操作しにくい(耳への装着、電池の交換など)
・耳掛け型に比べ機能が少ない
・慣れるまでに耳の中で音がこもる感じ、自分の声が響く感じがある

3.ポケット型

メリット

・操作が簡単
・価格が安い
・ハウリングが起きにくい
・乾電池なので電池寿命が長い

デメリット

・重たい
・大きくて目立つ
・イヤホンと本体コードでつながっているので活動において使いづらさがある
・マイクが本体部分についているので服の擦れる音が入る
・細かい調整ができない

補聴器の機能

高価格の補聴器に備わっている機能、補聴器の音に慣れるのを助けてくれる便利な機能

・雑音抑制機能 → 会話において「必要な音」と「そうでない音」の区別をある程度まで補聴器自身が行ってくれるが価格によってレベル差がある

・指向性機能 → 前方の音に集中しやすくなる

・自動環境認識機能 → 静かな場面、騒々しい場面、音楽が流れている場面などそれぞれの場面に合わせた設定に自動的に切り替わる

・スマートフォンとの通信 → ボリュームなどの調整がスマートフォンでできる。

両耳装用について

片耳よりも両耳に付ける方がいいのか?→補聴器は両耳装用が基本

両耳装用のメリット

・人間の聴力は両耳を使うことでバランスよく音を聞き分けることができる
・音の方向や位置をつかみやすい
・小さな音を聞き取ったり、雑音のなかから目的の音を聞き分けたりすることもしやすくなる、言葉の聞き取り能力の維持、疲れにくい   

両耳装用のデメリット

・価格が高い(片耳の1.8倍、 1.5倍。両耳割引があるため2倍ではない)
・片耳よりも取り付けや操作が難しい
・違和感や不快感がある(装用感、自分の声が響くなど)→徐々に慣れていく

補聴器を初めて使う方が躓きやすいこと

操作難しい
・補聴器の装着が自分ひとりでは困難
・電池の交換が難しい
・掃除方法がこれで正しいのか不安(耳垢、汗、湿気の処理)

装用時の違和感  
・自分の声がおかしい、マイクを使って自分の声を聞いてるみたい
・補聴器という異物を耳に入れることによる閉塞感

会話より周りの音が気になる
・前で話している人の声よりも周囲の音が気になる

期待していたほど音や会話が聞こえない
・1対1なら問題ないが複数の相手との会話になるとよく聞き取れない
・相手が早口だとわかりにくい
・講演会で話が聞き取りにくい
・テレビ番組ではバラエティやドラマが特に聞き取りにくい

突然の大きい音にビックリする
・車が通りすぎる音、ドアをバタンと閉める音

補聴器を初めて使う方の心得

目標設定が高すぎるとストレスになる。補聴器でどの状態を目指すのか販売店の担当者と話しあうことが重要

担当者と積極的にコミュニケーションを取りながら、合わないと感じたら調整をしてもらう、 さらに日常生活において補聴器を使い、その結果に基づいてさらに調整をしてもらう

はじめから何時間も補聴器を使用するとたいていは上手くいかない。段階的に使用時間を増やしていく方が良い。

補聴器で改善されないところばかりに目を向けるのではなく改善しているところに少しだけ目を向けてみる

自分の耳の状態を正しく理解し、あれもこれもしたいと多くの目標を立てるのではなく、「何のために補聴器を装用するのか」とできるだけ具体的な目標をひとつ決めておく

補聴器の装用では50年前の耳ではなく10年前の耳を目指す

目安
2週間目までは2、3時間
2週間目以降1ヵ月くらいまでは5、6時間以上
1ヵ月以降2ヵ月くらいまでは10時間以上

補聴器と集音器の違い

補聴器

薬事法で定められた医療機器。その為非課税対象。 JISの規格を受け、効果や安全性については基準レベルをクリアしたもののみが販売されている。

集音器

法的規制を特に受けていない。医療機器ではなく、音響機器としての扱い。その為課税対象。効果のあるものから過大広告ばかりの粗悪な商品まで様々。ほとんどが軽度難聴者用であり、その為に効果が得られず役に立たないと判断されることがある。

補聴器販売店

補聴器を扱うお店は全国に7,600店以上あるとされています。眼鏡店、電気店などの補聴器専門店以外のお店が補聴器を扱うこともあります。その為に十分な知識のない人が販売に携わっている場合も多いです。

認定補聴器専門店(認定補聴器技能者がいることなどの施設基準を満たし、審査を受けて認定されている店)は約790店しかありません。

通信販売もあり価格も安いものがありますがフィッティング(調整)などの費用が含まれていません。補聴器は原則としてその人の聴力に合わせたフィッテイングが調整が必要です。

おもな補聴器販売店
・補聴器専門店(独立系、チェーン店、メーカー系列、個人店)
・補聴器外来(耳鼻科内での補聴器相談)
・眼鏡店(全国チェーン、ローカルチェーン、個人店)
・電気店(大手、小売店)

補聴器購入店を選ぶポイント

1.購入前の貸し出しが可能か
 ・貸し出し制度、貸し出し期間、有料か無料か

2.購入した補聴器が合わないときの対応は確かか
 ・返品、交換、事前の約束事、条件 

3.3社以上のメーカーの補聴器を取り扱っているか

4.担当者のレベルはどうか
 ・補聴器の知識、説明が一方的ではないか

5.購入時に家族、友人、知人に同席を求められるか

6.その店で行うテストについて説明があるかどうか

7.他店での検討に寛容か

8.継続的に通える近い場所にあるか、自宅訪問のサービスの有無

9.補聴器のデメリットに関する説明があったか(下記)
 ・本人が言葉を聞き分ける力以上の効果を発揮することはない
 ・効果を出すのに時間がかかる
 ・聞きたい人の声と聴きたくない人の声を補聴器は選別できない
 ・早口を遅口にはできない
 ・補聴器になれても対応できる距離は3メートルくらいまで
 ・電池の交換が面倒
 ・定期的に掃除が必要

補聴器の価格

・約5万~50万円(片耳)まで価格幅がある(両耳購入だと割安)

・補聴器代金=補聴器本体価格+調整料金

・インターネットや通販などで割引価格で安く購入できる場合もあるが、調整料金が含まれていない、販入店の調整レベルが低いなどの問題が起こりうるので注意が必要。購入店以外で調整すると料金がかかることがあり結局割高になることも。

・価格が高い方が様々な使用環境(静かな屋内はもちろん、大人数が集まる会合や人ごみの中など周囲が騒々しく聞き取りの難しい場面)に 対して会話の聞き取りが良いです。

補聴器メーカー

1.シグニア補聴器 
2.パナソニック(日本)
3.ベルトーン(アメリカ)
4.ユニトロン(カナダ)
5.コルチトーン(日本)
6.リオネット補聴器(日本)
7.ワイデックス(デンマーク)
8.オーティコン(デンマーク)
9.リサウンド(デンマーク)
10.スターキー(アメリカ)
11.マキチエ(日本)
12.フォナック(スイス)

・補聴器メーカーは日本に12社ある。
・技術的には欧米メーカーが一歩進んでいる
・補聴器の性能自体には明らかな差はない
・メーカーごとの音質の違いがあり、その人にあった音質のメーカーの補聴器を選択することが
ベスト

生活環境で補聴器のランクを決める

自身の生活環境に合わせて補聴器を選択することが重要

1.仕事をしている(会議など大勢と会話する)→上位クラス

2.家族で住み、外出も多い →中位クラス

3.一人暮らしで外出も殆どない →下位クラス

補聴器の限界

補聴器は年々進化していますが限界があります。また、金額が高い補聴器であれば難聴がすべて解決できるわけでもありません。購入する前に補聴器の限界を知っておくことは重要です。 

・補聴器は万能ではない

・その人にとって最適の補聴器にするためには調整に時間がかかる。すぐに合わせることのできる眼鏡とは違う

・個人ごとに聴力が違うように補聴器が合う人と合わない人の差がある

・以前と全く同じようには聞こえない。補聴器を通した音なので音質に違いがある。ただ使っていれば徐々にその音に慣れてくる

・程度の差はあるが補聴器を装用しても下記の症状があります
  ・早口で話されると聞き取りにくい
  ・聞き間違いやすい言葉がある
  ・雑音と会話を区別しにくい
  ・複数の会話のなかから聞きたい言葉を拾い上げにくい